2014/03/10

ホラー映画。




先日、日本に一時帰国していた夫と、山形は蔵王の山中にある山小屋に泊まりに行った。
山形が、一年で一番雪深い季節。スキーシーズン真っただ中だというのに、平日だからか、山小屋は閑散としていた。そんな場所で、夫は「今夜一緒に『シャイニング』という映画を観よう!」と言う。既にしっかりパソコンにダウンロードし、ポータブルスピーカーまで買ってきている。

『シャイニング』(The Shining)は、スタンリー・キューブリック監督の有名なホラー映画。

物語は、コロラドの山中にある大きないわくつきのホテルで繰り広げられる。
雪深く、冬期には閉鎖されるこのホテルに、期間限定の管理人として作家志望の男が妻子を連れて住み込み始める。しかしそのうち、この誰もいないホテルでは色々とコワいことが起こり始め、徐々に男も発狂し、どうにもならない状況に陥るものの、最終的には、謎を残しつつなんとか着地するというもの。

極度にホラー系のものに弱い私は、今こうして夜中にこの映画のストーリーを思い出して書いているだけでも、呪われそうな気がしている。観た後は、コワさの余韻がすごくて全く寝付けなかったが、夫はそんな私を笑い、自分は爆睡。
まあ、恐怖要素をさておけば、色々な比喩が込められ、映像も素敵で、キューブリック監督独特の世界観がある、オサレな映画だった。

私にとって、人生初のホラー映画。観終わって、次の点が気になった。

1) 死体がちょくちょく出てくる。解剖学者の養老孟司先生も言っていたが、実際には
   死体よりも、生きている人間の方がよっぽど危険なはずなのに、死体は怖い。
         腐敗すれば、受ける印象としての怖さはよりパワーアップする。
      「死」のイメージがもたらす恐怖感は強い。

2) 表情が読み取れない人物は、怖い。これも死体と同様で、"意思の疎通が不可能な
  相手"、"何を考えているのかわからない相手"を人は怖いと感じるかららしい。
  意味不明な笑みが恐ろしく感じられるのも、このせいか。

3) 人がいないはずの場所で人の気配がすることは、怖い。

4) もしバックミュージックが陽気なリズムであれば、恐ろしいシーンも
  恐ろしくはない。効果音の影響は大きい。
  
5) それが悪霊であるにしても嫁であるにしても、「操られる男」というものは
  哀れである。

6)「いきなり出てくる」のは、それが怖いものであってもなくてもビックリするので、
  怖い。ただし、死体や人の気配に対するそれとはまた違った種類の恐怖感である。

7)人間の表情は、白目が多くなればなるほど怖い印象になるが、完全な白目になると
  逆にどこかコミカルにも見える。逆に黒目がちだと可愛く見えるが、黒目がち
       過ぎても怖くなる。白目と黒目のちょっとしたバランスが、表情の印象を左右する。

ちなみに養老孟司先生は、死体には3種類あると書いている。



一人称の死体は自分なので、これを見ることはできない。


二人称の死体は、近しい人の死体なので、駆け寄る。


三人称の死体は、見ず知らずの人の死体なので、逃げる。


人間の感じる恐怖感とは、少なからずイメージを根源とした幻のようなものなのか。
恐怖は恐怖であると同時に、面白い。
 


養老孟司著 死の壁

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